何の因果か、40過ぎてからプロヴァンスでシャンブルドット

 私はいま、南フランスのプロヴァンス地方に暮らしています。プロヴァンスといってもあまりイメージできないかもしれませんが、夏に咲く一面のラベンダー畑がこの地方の代表的な風景といったら、なんとなく想像していただけるでしょうか?

その南仏で、いまだに半分くらい旅人気分のまま、空や陽光の美しさや人々の暮らしぶりに感激しながら生活しています。

「フランスでの生活はどうですか?」とよく聞かれるのですが、いいこともあれば、嫌なこともあります。生活スタイルも考え方も、日本とは真逆といっていいほどかけ離れているので、いまだに驚くことばかりなのです。

 今回は自己紹介をかねて、私がどんな町で何をやっているかをお話しします。
 住んでいるのは、フランス第2の都市マルセイユから内陸に30kmほど入った、エクス・アン・プロヴァンスという町(以下、エクス)。画家のセザンヌが生涯描き続けたサント・ヴィクトワール山で有名です。私はここで、何の因果か、シャンブルドット(フランス版民宿)をフランス人の相棒(名前はダヴィッド)とともに営み、彼はチャーターで南仏の素敵な場所へお客様をご案内したり料理教室をしたりしています。一緒にゼロからスタートしました。

 2011年からエクスに住んでいますが、ここはプロヴァンス観光の中心といえる町で、世界中からのツーリストが多く、学生も4万人いるのでいつも賑やか。温泉が湧き、町中に美しい泉があり、春にも夏にも音楽祭が開かれるなど文化度も高く、おしゃれなブティックやレストランも多く、どこへも歩いて行けるのが魅力です。旧市街の中は17、18世紀の建物が並び、中心に市庁舎があり、マルシェが毎日立ちます。昔から裕福な町なので、建物もバロックやロココのみごとな装飾に彩られ、散歩するだけで豊かな気持ちになる町です。そのうえ治安がよいとくれば、観光客に人気が高いのもうなずけるというもの。パリからTGVで3時間なので、週末を過ごすパリジャンも多いようです。

 マルシェで買い物をして、ゆっくり昼食を作り、食後は少し町を散歩。休日のそんなたわいもない時間が幸せを感じさせてくれる町。冬でも青空が広がり、それだけで心が開放されるのですから、南仏が欧州の人たちの憧れの地であり続けているのは納得です。

 ……などと書くと、ここで暮らす私はひじょうに恵まれているように思われるかもしれませんが、ここにたどり着くまではかなり紆余曲折、たいへんな時期もありました。
 人生というのは、本当に面白いものです。何が待っているかわからない。アクシデントのような出会いがあり(出会いはいつだって偶然)、未知の世界に飛び込むか飛び込まないか、飛び込んだあとはどっちの方向へ泳いでいくか……。私たちはつねに選択しながら生きています。でも、人生は一度きりでやり直しがきかないので、その判断が正しかったかどうかの答えは誰にもわかりません。
 大きな選択をするとき、私はああでもない、こうでもないとかなり執拗に考えますが、最後に決断するときはいつも「直感」。自分の心の声に従います。問題は、日本にいたときは、その「声」がうまく聞きとれなかった。なぜかと振り返ってみると、こうでなければ、という目に見えない縛りがたくさんあり、それが障害となって、本音が心の奥に押し込められていた気がするのです。
 フランスにいると、それがとてもラクにできる。人は人。自分は自分。助言を求めれば真摯に答えてくれるけれど、無責任に口を出すおせっかいはいない。その代わり、いっさいの責任は自分。 個々の精神の自由を守るためにお互いが尊重し合う、といったほうがよいかもしれません。この点はとても気に入っています。

 いま、つくづく思うのは、人生は短い。じっさい、想像していたよりもずっと短い。世界や日本を変えようと思っても思うようにはいきませんが、自分自身を変えるのは簡単。思い立ったが吉日、即日可能です。自分の人生は自分次第。私など、フランス語もまったくわからないのに、40過ぎてからフランスで暮らし始め、なんとか今までやっていけているのに驚くばかりです。でも、明日のことはわかりません。リスクのないところに、ワクワクするような人生などないのかも、とも思います。

 年の始め。心にもない優等生的な抱負など捨てて、本当の自分は何と言っているかに耳を傾けてみるのもよいと思います。たとえどんなに小さなことでも、行動することで人生は耕され、より充実したものへと変わっていくもの。私も今の自分に固執せず、自由に、柔軟に、今年も人生を面白がって精一杯生きてみたいと思います。

年の初めに。プロヴァンスより。
Bonne Année !

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エクスから車で足をのばせば、小さな美しい村がたくさん点在しています
エクスから車で足をのばせば、小さな美しい村がたくさん点在しています

◉簡単おうちフレンチレシピ

冬になると食べたくなる定番料理
「オニオングラタンスープ」

材料(2人分)
玉ねぎ(中)4個 約400~500g
バター 35g
小麦粉 20g
牛のブイヨン(または野菜ブイヨンと半々)800ml(200ml分の水を白ワインにするとより美味しい)
ロリエの葉 1枚
クローブ 1個(あれば)
塩、コショウ 適量
パン 2切れ
とろけるチーズ 30g

作り方
①玉ねぎを薄切りにする(薄いほうが美味しいです)
②鍋にバターを入れ、プツプツいうくらい熱してから玉ねぎを入れ、塩とコショウを加え、中火で玉ねぎが透明になるまで炒め、焦げないようにブイヨンをスプーンで加えながら炒める。最低10分
③玉ねぎが茶色く色づいてきたら、小麦粉を振り入れ、いっしょに炒め、ブイヨンを約100mlずつ入れ、よく混ぜ合わせる。
④ロリエとクローブを加え、少し火を弱めて30分以上煮込む(時間があれば、とろ火で1~2時間)
⑤器の大きさに合わせて切ったパン(厚さ1cm)の上にチーズをのせ、トースターでチーズがとろけるまで焼く。
⑥一人分の器にスープを注ぎ、上に⑤をのせる。お好みでパセリのみじん切りなどをちらす。
これなら、オーブンがなくても手軽に作れます。

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町田陽子
町田陽子 Yoko MACHIDA 南フランス在住 エディター。執筆 2017年1月に著書『ゆでたまごを作れなくても幸せなフランス人』(講談社)を刊行。 7月にガイドエッセイ『プロヴァンス(仮)』(イカロス出版)を刊行予定。 「南仏プロヴァンスの旅アラカルト」主宰 シャンブルドット「Villa Montrose」(ヴィラ・モンローズ/フランス版民宿)を営み、元料理人のダヴィッドが日本語で観光チャーターや料理教室、ターブルドットを担当しています。毎年3月開催の阪急うめだ本店「フランスフェア」をコーディネイト。 HP : http://www.villamontrose.com/ Facebook page : https://www.facebook.com/provence.voyage/ Blog : http://ameblo.jp/provencal/ twitter : https://twitter.com/yoko_machida Instagram : https://www.instagram.com/yocomachida/

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