衣食住。あなたにとって、いちばん大切なのはどれですか?

 フランス人によくする質問があります。
「衣食住、あなたにとって一番大切なのはどれですか?」

 答えは何だと思いますか?
圧倒的に多いのが、「住」なんです。
フランスといえば、グルメの「食」、有名ファッションブランドの「衣」のイメージが強いので、ちょっと意外ですが、迷わず「家!」と答える人が多いのです。

 しかし、前回書いたように、フランス人にとって大切なのは、仕事より家庭。そこに人生の基盤があるわけなので、考えてみれば、家族の“基地”=家を大事にするのは筋が通っています。

 フランスでも日本同様、マイホーム信仰があります。私の周りでも、一人目の子供ができる頃にマイホームを購入する若いカップルが多いのですが、フランスの不動産は一般的に、中古になったからといって急激に値下がりしたりはしないので、資産価値が目減りせず、買い替えしやすい。そのため、その都度、自分たちの身の丈にあった家に買えていけるのが日本と大いに違う点かもしれません。生涯の平均引越し回数も日本人よりフランス人のほうが多いようです。

 かくゆう私はといえば、「食」はマルシェなどで生産者から直接購入する新鮮な素材でおうちごはん、「衣」は年に2度のセールを利用して最小限の出費と、フランス人の影響を多大に受け、すっかりケチの締まり屋と化していますが、「住」はそうそう簡単には予算を削れません。心からくつろげる空間で、好みのインテリアに囲まれて暮らしたい。しかし、悲しいかな、ふんだんな予算はない……。
 そんなジレンマに打ち勝つには、周りのフランス人の行動を観察して見習えばいいのです。

 行き先は、Vide Greniers(ヴィド・グルニエ)とBrocante(ブロカント)! ヴィド・グルニエは、屋根裏部屋のいらないものを一掃するいわゆるガレージセールで、インテリアや家具というよりは、食器、本、おもちゃ、リネン類、雑貨、洋服などありとあらゆるものが、ガラクタも含め、所狭しと並んでいます。一方、ブロカントは古道具市のことで、アンティーク(骨董)とはいえないまでも、ヴィド・グルニエに比べると価格帯も高く、家具類も充実。
 こうした市を見て回る楽しさといったら! サハラ砂漠から一粒の金を探すようなときもあれば、ざくざくと見つかることもある。これぞ一期一会。私を待っている物にうまく出会えるかどうかは、探求心と運、それに尽きます。ただ、私はキラリと光る好みの物を見つけるのは得意だけれど、値段交渉能力はゼロなので、ときに暇なフランス人の友人に付き合ってもらうことも。彼らの交渉力を見るだけでも、ランチをご馳走する価値ありというものです。

 というわけで、我が家は、南仏各地の市で手に入れた家具や雑貨でいっぱい。お買い得という利点に加え、時を経た物だけが醸し出す、チャーミングな物たち。ときには、そうした家具などにペンキを塗ったり、絵を描いたりしてオリジナルにしてしまうことも。高級アンティークじゃないからこそできる自由さが私の好みです。ただし裁縫は大嫌いなので、リネン類でやってみたいことはたくさんあるけれど、できません(^_^;) ダヴィッドに言わせると、ほつれた服も、私が直すより、ほつれた状態の方がまだマシというレベルなのですから。

 うちのシャンブルドット(フランス版民宿)にお泊まりのお客様から「こんなに個々のアイテムはばらばらなテイストなのに、どうしてまとまった印象なのですか?」と聞かれることがあるのですが、そもそもお揃いのセットものが好きではないのです。それと、たぶん「好き」なものが明確で、かつ、長い目で好きな物を集めていく覚悟があるからかもしれません(実際、我が家はまだまだ理想には程遠い)。完璧でなくても、たとえ不便でも、好きなものに出会うまで、気長に待つ。この「待つ」という行為を、私はフランスに来てから学びました。

 以前、東京のマンションをリフォームしたときは、リフォーム業者の方に来てもらい、カタログから素材を選び(たとえ気に入ったものがなくても妥協)、短期間で一気に施工してもらいました。でも、こちらフランスではそうはいきません。床のフローリング材やタイル、バスタブ、洗面台にいたるまで、自分たちで探さなくてはならないのです。しかし、その一つ一つの過程で、自分たち好みの巣を作っていく楽しみが味わえるのですから、時間がかかればかかっただけ、楽しい時間を満喫できるともいえます。2年も3年も5年もかけて、プロにまかせず、自分たちで家づくりを少しずつ楽しむ人もいるぐらいです(当然トラブル続きですが)。

 2015年は、暮らしの優先順についてとことん考えた1年でした。自分たちにとって、何が大切なのか、妥協できないものは、不要なものは何なのか。ときどき、ふと立ち止まり、客観的かつ主観的に見直してみるのは意義のあることだと思います。生活の質は、フランス語ではQualité de vie(カリテ・ド・ヴィ)といいますが、その理想形は、年齢や環境によって変わっていくものだと思うからです。
 考えに考えた結果、私たちの2016年の暮らしはちょっとした変化を迎えそうです(そのことについては、またお話ししますね)。変わること、トライすることは、ちっとも怖いことなんかじゃない。だって、万一失敗したとしても、また考え直せばいいのですから。
 まずは先入観をとりのぞき、じっくり、シンプルに考えてみる。そして、優先順の上位にあがったことを、無理のない範囲で「とにかく、やってみる」。それが、居心地のいい暮らしを手に入れる秘訣なのかな、と思う今日この頃です。
 これから春。心機一転、生活空間をリフレッシュするにはいい季節です。

♦ヨーロッパに旅行される予定の方へ
下記のサイトでヴィド・グルニエとブロカントの日程が調べられます(フランス、ベルギー、スイス、ルクセンブルク)

https://vide-greniers.org/?utm_source=facebook&utm_medium=linkImg&utm_campaign=manifMois_fevrier

小さな鷲ノ巣村に住む友人の家。この眺めは、私の夢のひとつ。いつか、きっと!
小さな鷲ノ巣村に住む友人の家。この眺めは、私の夢のひとつ。いつか、きっと!
リル・シュル・ラ・ソルグで毎週日曜日に開かれるブロカントの市
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好きだったブロカントのお店(もう閉めてしまったけれど)
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現在の我が家のリビング。気に入っているのは、南向きの広い窓と高い天井と梁。
現在の我が家のリビング。気に入っているのは、南向きの広い窓と高い天井と梁。

◉簡単おうちフレンチレシピ

ふわふわサクサクなジャガイモと
ひき肉の旨味に
ほっこりココロが温まる
「パルマンティエ」

材料 2人分(15x15cmの器)
ジャガイモ 大3個(約400g)
玉ねぎ 大1個
豚ひき肉(お好みで合挽きでも)150g
バター 40g
卵 2個
牛乳 230ml
小麦粉 大さじ2
とろけるチーズ 30g
塩、コショウ 少々
パン粉 適量

作り方
①ジャガイモを、皮をむいて蒸す(茹でても)
②フライパンにバター20gを弱火で熱し、大きめのみじん切りにした玉ねぎを入れ、ゆっくり炒める。こげないように、途中で水を大さじ1杯程度入れる
③水分がとんだら、小麦粉を茶こしでふるいにかけながら加え、火からおろしてよく混ぜる
④極弱火で、しゃもじで混ぜながら、牛乳を少しずつ加える。
⑤しっかり固めのホワイトソース状になったら、塩、コショウ、お好みでナツメグ少々を加える
⑥肉を加え、弱火で混ぜ合わせる。肉が半生状態になったら火から下ろす。
⑦蒸しておいたジャガイモをボールに入れ、温かいうちにこし器でこす。こし器がなければしっかりつぶす
⑧卵をボールに割り入れ、泡立て器で撹拌する
⑨バター20gを小鍋で溶かす。弱火
⑩⑦に塩少々、チーズ15g、⑨のバターを加え、素早くしゃもじで混ぜ、さらに卵を加えて力強くしっかり混ぜる
⑪耐熱容器に⑤を隙間なく入れ、その上に⑩を重ね、表面を平らにし、残りのチーズを上にかけ、最後にパン粉をまんべんなくふりかける
⑫180度に熱しておいたオーブンで15~20分焼く。オーブンがない場合は、オーブントースターでもOK。小さな容器で一人分を2個焼いてもよい

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町田陽子
町田陽子 Yoko MACHIDA 南フランス在住 エディター。執筆 2017年1月に著書『ゆでたまごを作れなくても幸せなフランス人』(講談社)を刊行。 7月にガイドエッセイ『プロヴァンス(仮)』(イカロス出版)を刊行予定。 「南仏プロヴァンスの旅アラカルト」主宰 シャンブルドット「Villa Montrose」(ヴィラ・モンローズ/フランス版民宿)を営み、元料理人のダヴィッドが日本語で観光チャーターや料理教室、ターブルドットを担当しています。毎年3月開催の阪急うめだ本店「フランスフェア」をコーディネイト。 HP : http://www.villamontrose.com/ Facebook page : https://www.facebook.com/provence.voyage/ Blog : http://ameblo.jp/provencal/ twitter : https://twitter.com/yoko_machida Instagram : https://www.instagram.com/yocomachida/

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