すぐに真似できる!プロヴァンス流 簡単で効果的なハーブづかい
今年もラベンダーの季節がやってきました。オートプロヴァンスからリュベロンにかけて、どこまでも紫の絨毯が続く風景には毎年圧倒され、何度見ても見飽きることがありません。栽培している畑がほとんどですが、標高の高いところに行くと、道端に野生のラベンダーが咲いていて、それは可憐で美しいものです。
あまり日本では知られていませんが、古代から薬用植物として用いられてきたラベンダー(真性ラベンダー)はフランス語で「ラヴァンドゥ」といい、標高が約800m以上のところでしか育たない植物なのです。それを低地でも育てられるように改良したのが「ラヴァンダン」。こちらはハイブリッドで、真性ラベンダーのような効果効能は期待できません。日本ではエッセンシャルオイルに「ラベンダー」としか表示されていないものが多く見受けられますが、フランスでは必ずどちらなのかがきちんと表記されており、値段も倍ぐらい違うのです。
ラベンダーの最大の魅力は、いわずもがな、爽やかな香り。この匂いを嗅ぐだけで頭がすっきりしてくるほどですが、ラヴァンドゥのエッセンシャルオイル(精油)を1本もっていると、かなり役立ちます(私は家中のあちこちに小瓶を置き、出かけるときもバッグにしのばせています)。
日常生活のなかで活用できる具体的な使い方を、いくつか紹介します。ハイブリッドではないラヴァンドゥの精油がよいと思いますが、私は虫除けや掃除用洗剤にのみ、ハイブリッドのラベンダーオイルを使用しています。
◉ ゴミ箱の底に、精油を染み込ませたコットンを入れておくと、消臭&バクテリア対策。同様に、掃除機に吸い込ませておくのもおすすめ(まずは掃除機の中を掃除してから入れてくださいね)。
◉ 水250mlに精油を10滴混ぜて植物の葉にスプレーすると虫除けに。
◉ 大きなストレスがあるときには、精油を直接両手首に数滴たらして、こすりつけると落ち着きます。
◉ 木の家具に虫がつかないよう、定期的に精油を染み込ませた布を入れておく。
◉ 風邪のひきはじめには、精油を数滴垂らしたお湯の湯気を吸入する。
◉ 自家製のお掃除洗剤の作り方/ホワイトビネガー100ml、食器用洗剤大さじ1杯、ラベンダーとタイムの精油各10滴を混ぜるだけ。私はスプレー容器に入れて、家中の掃除をしています。ビネガーの匂いはすぐに飛びます。
◉ 蓋つきのガラスの容器などに粗塩500gと精油10滴を入れ、よく振ってかき混ぜ、ぬるめのお風呂にたっぷり入れて20分ほどつかります。お肌はつやつや、なにより、ぐっすり眠れるのがうれしい。
面倒なことが大嫌いなので、どれも簡単なことばかり。ぜひ一度試してみてください。
フランスでもスーパーでは用途・場所別の掃除用洗剤や消臭スプレーなどがずらりと並んでいますが、化学物質が含まれたこの手のものはできるだけ使いたくないので、ラベンダーの精油が我が家では大活躍なのです。上記はハーブの専門家のレシピをもとに、私自身が日常的に実践している方法ですが、もし体調が悪くなったりしたらやめてください。
田舎の家に行くと、朝、窓を開けた瞬間、草木の匂いが部屋に入ってきます。夜は夜で、テラスにいると花の香りが昼間より強く感じられ、心地よく、とてもリラックスできます。冬はプロヴァンスでも暖炉を焚く家が多いのですが、田舎だと、庭に生えているローズマリーやタイムなどを薪と一緒にくべて、ついでにオレンジの皮なども入れて、部屋の空気を洗浄します。プロヴァンスならではの昔からの香りづかいですが、町暮らしだとなかなか、そうはいきません。私は日本でもフランスでも車の免許をもっていないため、こういう暮らしは夢のまた夢。なので、エッセンシャルオイルやキャンドル、ディフューザーなどを使って、自分なりに香りを楽しむ工夫を積極的にしています。
フランスでも天然の植物の香りを封じ込めたキャンドルが各種売られており、私はそれらを日替わりで楽しんでいます。スプレーやディフューザーとは違った香りのたちかたで、大好きなのです。色んな種類を寝室にも並べていますが、定番は、ラベンダー、オレンジ、西洋ボダイジュの3種。寝る前に10分、15分だけ、好きな香りのキャンドルを焚くと、それだけでとても優雅な気分で眠れます。
しかし、朝はそんなノンビリしたことはやっていられないので、精油を直接ミスト状に拡散してくれる電気式のディフューザーを使って、頭を活性化してくれる香りを少しだけ(午前と午後に10分ずつくらい)部屋にふりまきます。ちなみに、仕事を始める前はいつも決まった香り。ラベンダーとグレープフルーツのミックスです。この組み合わせは頭スッキリ、集中できる気がして、とくに気が乗らない仕事の前には、必ず拡散(笑)
これからの季節、夕方にラベンダーかユーカリの精油を拡散しておくと蚊よけになります。私は、玄関やリビング脇の窓辺には、蚊の嫌いなシトロネルやバジルを植えて、夕方はラベンダーの精油をふりまき、蚊除け対策は万全。
香りは鼻から入り、脳に直接伝わり、匂いとして認知されるものだけに、その影響力は馬鹿にできないと思います。精油の香りによる療法もありますが、日本では精油は雑貨扱いのため効果がうまく伝わらず、せっかくの植物の力を知ることができにくいのが残念です。
ジャン・コクトーがこう言っています。
「南仏は根っこを作る温室。パリは花を売るブティック」
大地からむくむくと湧き上がってくるような植物のエネルギーや、ミストラルの強風にさらされても、からからに乾燥してもびくともしない崖っぷちに自生するハーブたちを見ていると、南仏の植物たちの根っこの生命力はタダ者ではないと思い知らされます。
私のまわりのプロヴァンスの人たちを見ていると、気持ちよく暮らすということがじつにうまいなと、感心します。第一に、ちゃんと休むし、家族や友人との時間を最優先にする。食べることもおろそかにしない。おしゃれして夫婦でよく出かけ、美しいものが大好き。田舎に住んでいるんだからむさ苦しくてもいいの私、と思っている人は、たぶん皆無。なにより、物質的なことでない部分で豊かに暮らしているというのがすばらしいと思うのです。快適に心地よく暮らすというのにはいろんな側面があると思いますが、プロヴァンスに来て、私が実践しているのは、よく眠ることと、植物の恵みをいただくこと。新鮮な季節の野菜や果物、オリーブオイルをたっぷり食べ、植物の香りに囲まれ、目に見えない心と体のバランスをとるようにしています。
そしていちばん大切なのは、無理せず、できる範囲で、人生をおおいに楽しむこと!
Recette
サクランボのクラフティ
6月のプロヴァンスはサクランボがとびきり美味しい季節!
失敗しない超簡単な焼き菓子をご紹介します
◉材料(4人分)
熟したサクランボ(アメリカンチェリーなどお好みのタイプで) 300g
小麦粉 50g
卵 3個
塩 ひとつまみ
バター 25g
牛乳 100ml
砂糖 45g
バニラエッセンス 2滴ほど
◉作り方
①オーブンを210度で温めておく
②さっと水洗いしたチェリーの水をよく切り、種をとる
③小鍋でバターをゆっくり溶かして粗熱をとっておく
④ボールに小麦粉、砂糖、塩を入れ、よく混ぜる
⑤卵をかき混ぜ、④に少しずつ加えては混ぜ合わせ、さらに牛乳とバニラエッセンスを加え、最後にバターを加えてよく混ぜる
⑥耐熱のタルト皿にバターをぬり(分量外)、チェリーを並べ、生地を流し込む
⑦210度のオーブンで10分、その後、180度に下げて約20分焼く
町田陽子 Yoko MACHIDA
南フランス在住
エディター。執筆
2017年1月に著書『ゆでたまごを作れなくても幸せなフランス人』(講談社)を刊行。
7月にガイドエッセイ『プロヴァンス(仮)』(イカロス出版)を刊行予定。
「南仏プロヴァンスの旅アラカルト」主宰
シャンブルドット「Villa Montrose」(ヴィラ・モンローズ/フランス版民宿)を営み、元料理人のダヴィッドが日本語で観光チャーターや料理教室、ターブルドットを担当しています。毎年3月開催の阪急うめだ本店「フランスフェア」をコーディネイト。
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