60過ぎても素敵なカップルでいるために。フランスで学んだヒント10
今回はバレンタインにちなんで、愛のお話を。
私の周りには、うらやましいほど素敵なカップルがたくさんいます。町を歩いていても、年齢に関係なく、仲睦まじく手をつないで歩いている男女がたくさん。お断りしておくと、ここでフランス夢物語的な作り話を披露するつもりはありません。実際、フランスは離婚・再婚率も高く、複雑な家庭環境で暮らす子供達が多いのも事実です。私の男友達(45歳)など、年末に3度目の離婚をしました。ちなみにフランスでは、結婚7年目と40代が離婚の危機に見舞われるタイミングと言われています。
愛が冷めてしまえば潔く別れるフランス人ではありますが、通常、カップルはいつも行動を共にします。私の相方であるダヴィッドの両親は19歳で結婚して現在60代半ばですが、どこにいくにも一緒で本当に仲が良いです。休日に夫はゴルフ、妻は友達とレストランでランチ、なんてことはまず、ない。ゴルフ好きの友人などは、週末にゴルフをしたいがために、妻と子供にゴルフの面白さを根気よく教え、いまでは週末もヴァカンスも家族でゴルフ三昧しています。
何はともあれ、カップルは、
①仕事が終われば、速攻、我が家へ。
が基本。毎晩のように同僚や友達と飲んで、あるいは残業で遅く帰る日が続けば、黄色信号。共働きが多いので、男女ともに子育てや家事をする必要もある。どちらかに負担が重くのしかかれば、赤信号。夫婦、家族こそが何より大切な存在であり、人生のベースなのです。
日本と違うのは、
②結婚して子供ができても、あくまでも「男と女」のスタンスは変わらない。
③子供ができたとたん、呼び名が「パパ」「ママ」に変わったりもしない。
④子どもは小さなときから個室を与えられ、パパとママの寝室を邪魔したりしない。
⑤ベッドはダブル。ツインベッドは子供のもの。
⑥パジャマは老人と病人のものであり、裸で寝る。
だまされたと思って、裸で寝てみてください。肌と肌のふれあいというのは、想像しているよりずっと安らぐもの。どこまでホントかは知りませんが、寿命も延びるそうですよ。
そして、忘れちゃいけないのが、
⑦フランス人の十八番、「ジュテーム(愛してる)」の言葉。
これは、バレンタインデーや結婚記念日だけのとっておきのセリフというわけじゃなく、日常用語。しかも、心をこめて。これには本当に驚きです。日本人の私は最初とまどいましたが、敵はかなり頻繁に口にします。しかも、なぜ愛しているかの説明付きで、髪を撫でたり、おでこにキスしたりしながら。
言わぬが花、という言葉がありますが、言葉にしなくちゃ本当のところは相手に伝わらない。それくらい分かってるでしょ、というのは甘えであって、愛や感謝、リスペクトをきちんと日々表明していくことがフランス人には大切なのでしょう。
うちの相棒がよく言います。
「放っておけば、愛の炎は消えてしまう。それを持続させ、さらに深めるには努力が必要」と。
そして、
⑧夫婦喧嘩は論理的に。
二人の間に問題が生じたときには、とことん話し合う。
黙ってどちらかが我慢していると、ろくなことになりません。先日、友人カップルの夫の方が、妻にこう言いました(後日談)。
「最近、僕はあなたの態度に我慢ならない。仕事が忙しい、体調が悪い。それはわかってる。だから僕はどんなに忙しくても子供の面倒を見、料理をし、掃除もしてる。けれど、君からは誠意や愛情をこれっぽっちも受け取っていない。君が改善してくれなければ、これ以上、僕は我慢できそうにないんだ」と。妻は思いがけない言葉に驚きますが、ことほどさように、自分では問題に気づいていないことがたくさんあり、気づかなければ問題は悪化するばかり。
小さな問題でも、大きな問題でも、問題の原因と解決策をロジカルに話し合うことが大切。フランスでは、涙は武器になりません。まして、2日も3日もふて腐れて話をしないのは最悪。かつての私がそうでした(^_^;)
また、二人の間のことだけでなく、
⑨日常のささいなことを話す習慣も大切。
私たちは、お互いに知らないことはないというくらい、どうでもいいことも含めて話すのが日課。だから、困ったことも辛いことも夢や希望も失敗も成功も、自然に話せるのかもしれません。顔色ひとつで、私の不自然な様子も見抜かれます。先日、落ち込んだことがあり、しかしすぐに言わないでいたら、「ちょっとここに座って」「何があった?」と問いただされました。そしてハグしながら、「それは、あなたのせいじゃない」「あなたは精一杯やったのだから」「愛してる」と言い続けてくれました。良いことも悪いこともすべてを受け入れてくれる人の存在は、人生をリラックスしたものにしてくれます。
最後に、
⑩ユーモアを忘れない。
家のなかに笑いがあることはとっても大事。相手を笑わせる努力を怠りなく。
そうした関係を続けていくことで、恋に落ちたての新米カップルから真の夫婦へ、そして「盟友」になっていくのだろうと思います。
今朝、ダヴィッドからこう言われました。「今夜は僕の素敵な妻と二人でレストランで食事したい気分」。
というわけで、そろそろシャワーを浴びて、お化粧をして、おしゃれをして、気合を入れて、行ってまいります! では、また! A bientôt !
◉簡単おうちフレンチレシピ
2月2日「ろうそく祝別の日」にクレープを食べるフランスの習慣にちなんで
「クレープ・コンプレット」
クレープ生地の材料(6枚分)
薄力粉 125g
卵 2個
牛乳 250ml
バター 25g(溶かしたもの)
塩、砂糖 ひとつまみ
生地の作り方、焼き方
①ふるっておいた薄力粉をボールに入れ、卵を加える
②泡立て器でしっかり混ぜ合わせ、牛乳を3回に分けて加えて混ぜる
③少し冷ましたバターと塩、砂糖を加えて混ぜる
④30分~1時間、生地を寝かせる(常温で)
⑤フライパンを熱し(フランスにはクレープ専用のフライパンが有)、クッキングペーパーで油を均等にしく
⑥お玉で生地をすくい、フライパンに一気に流し入れ、すぐにまわして均等に生地を丸く広げる。中火。
⑦フライパンを動かして、生地が動くようになったら裏側を確認。薄く焼き色がついていたら、ひっくり返す。両面で最大3分。
※先に生地をすべて焼き、重ねておくのがフランス流
具材のトッピング
お好みの具材をのせて、オーブンまたはフライパンであたためます。ホットプレートを使っても。
★フランスでいちばん人気の、ハム、卵、チーズの「コンプレット」
①フライパンで目玉焼きを作る
②クレープの上にハムをのせ、その上に①をのせ、とろけるチーズをふりかける
③オーブンかフライパンでチーズがとろけるまで温める
④火からおろして皿に移し、端を折りたたむ
そのほか、マッシュルーム、鶏肉、クリームソース……お好きなものをトッピングしてください。
町田陽子 Yoko MACHIDA
南フランス在住
エディター。執筆
2017年1月に著書『ゆでたまごを作れなくても幸せなフランス人』(講談社)を刊行。
7月にガイドエッセイ『プロヴァンス(仮)』(イカロス出版)を刊行予定。
「南仏プロヴァンスの旅アラカルト」主宰
シャンブルドット「Villa Montrose」(ヴィラ・モンローズ/フランス版民宿)を営み、元料理人のダヴィッドが日本語で観光チャーターや料理教室、ターブルドットを担当しています。毎年3月開催の阪急うめだ本店「フランスフェア」をコーディネイト。
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