LIFE

人生は、自分の居場所をさがす旅

町田陽子

 私の相棒ダヴィッドは、南仏のバンドール、サナリー・シュル・メールの海辺の町で青年期までを過ごしました。マルセイユとトゥーロンの間に位置し、いまでは高級別荘地として人気の高いエリア。プロヴァンスの木製の小舟が港に停泊し、ヤシの木に縁どられたプロムナードには、おしゃれなカフェやレストランが並んでいます。

 そんな絵葉書のように美しい場所にもかかわらず、彼はこの町を10代後半で飛び出しました。理由はシンプル。
「退屈だったから」

 その後、パリ、ニューカレドニア、日本などで暮らすこと20年。大人になるにつれて、故郷の美しさに気づき、40歳になる前に戻りました。いまでは、留守にしていた時間を取り戻すかのように、南仏の地に根をはやし、この場所の魅力にとりつかれているように見えます。

サナリー・シュル・メールの港

 かくゆう私はといえば、愛知県で生まれ、大学卒業後に東京へ移り、40歳すぎてから南フランスへ移住しました。思えば、ずっと「定住する」という意識はなかったような気がします。定住しないかもしれない、という、ある種、不安定な状態が自分にとって居心地がいいのでしょう。

 なぜかと考えてみると、私にとってもっとも大切なのは、精神的な自由さだからだろうと思うのです。いざとなれば、いつでもどこへでも飛び立てる自由さ。だから、いまでも日本にいる友人たちには、「いつまで南仏にいるかわからないのだから、早く遊びに来てね」と言っています。実際には当分ここで暮らすとは思うし、南仏はとても気に入っているので一生住んでもかまわないとも思っているのですが、気分的には未定としておきたい。そう、未定部分が多いほど、人生ってわくわくすると思いませんか?

南フランスの新鮮な季節の野菜とフルーツ。

 ノマド(nomadeフランス語で遊牧民の意)からの造語で、ノマドロジーという言葉がありますが、境界を越えて流動し続け、自己にも固執せず、自由自在に生きていくイメージは私にとって理想です。移民問題、EUの存続危機など、こうした生き方が難しくなりつつある社会的な流れは、とても残念。目下の目標は、拠点を2か所に増やすこと。南フランスの拠点は固定して、もうひとつは流動的というのも面白そう、と思っています。

「夢物語」で終わらせるのはカンタン。でも、短い人生ですから、トライできることはやってみたい。リスクはあるけれど、死ぬ間際に後悔する最大のリスクに比べたら、ずっとまし。だって、やり直しはできるのですから。

 居場所が見つからない、しっくりこない、というのは、本能で感じることだと思います。別の国に移ったとたん、別人のように明るくなった人や、仕事場を変えたとたん、認められてメキメキ職人としての腕を伸ばした人などを知っています。

冬、集まって暖をとるフラミンゴたち。カマルグにて。

 プロヴァンスのカマルグというローヌ川のデルタ地帯には、野生のフラミンゴがたくさん棲んでいるのですが、不思議なことに、寒くなる前にアフリカ大陸へ渡るグループもいれば、南仏に居残るのもいるのです。居残り組は、運悪く、今年の冬のように厳しい寒波がきてしまうと、生き残れないのも出てしまいます。フラミンゴにとっては、大いなる賭け。これも、各自が自分の本能を信じて判断しているのでしょう。

 人に頼らず、自立して、判断、決断、そして実行する。これが人生を自由に楽しむためのメソッド1。そして、アンテナをしっかり張っていれば、チャンスやいいタイミングが必ずやってくる。その時がきたら、迷わず、勇気を出してスイッチを押すのです。その瞬間を見逃さないよう、備えよ、つねに!

◉簡単おうちフレンチレシピ

今回ははじめてのスイーツ。
簡単すぎて、ごめんなさい。
「メレンゲ・フランセーズ」

材料
卵白 約4個分 120g
砂糖 180g

作り方
①卵白をしっかり泡立て、砂糖を加えてさらに泡立てる。
②お好みでバニラエッセンスやチョコレートなどを加える。
③天板にクッキングシートを敷き、スプーンで形を整えた②をのせる。
④事前に温めておいた130度のオーブンで1時間焼く(オーブンによって時間が異なるので、ときどきチェック)
⑤チョコレートパウダーをふりかけ、冷ます。

食後のコーヒーのおともにどうぞ。

絞り袋を使って成型したり、色を加えたりしてアレンジできます

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