Queen Of The Night 女王と過ごす不思議な晩餐会
New Yorkでは、最近体験型のパフォーマンスが話題になっている。体験型パフォーマンスとは、ただ観客がステージの上のパフォーマンスを見るというだけにとどまらず、観客が自由に空間を行き来できたり、よりパフォーマーに関わる事ができる様なインタラクティブな新しいスタイルのパフォーマンスだ。
昨年は古いホテルを利用した空間で公演されている「Sleep No More」(www.sleepnomorenyc.com)というシェイクスピアのマクベスをベースにしたパフォーマンスが大きな話題になった。(2015年12月現在も公開中)。観客は会場に入ると、白いマスクをつけさせられ、少し不気味な洋館を自由に移動する。各フロアには、とても凝ったセットがあり、さまざまなフロアで演じているパフォーマーたちの演技の断片を見ながら観客はストーリーを繋ぎ合わせ、そこで何が起こっているのかを探っていくという不思議な体験をする。ステージ上のパフォーマンスを見るのではなく、同じ空間で演じているパフォーマーの姿を身近にみる事で、まるで自分もそのストーリーの一部の中にいるような臨場感があり、パフォーマーは基本的には、同じ空間にいる観客を無視して演技をするので、自分がまるで透明人間にでもなったような錯覚も感じたりする。会場の一部には、Jazz Barがあり、全てがミステリアスでスタイリッシュにまとめられた大人のテーマパークのようなパフォーマンスは、すぐにニューヨーカーの間で口コミで広がり話題になった。
そのSleep No Moreのプロデューサー、ランディー・ウィーナーが手がける、新プロジェクトがQueen Of The Nightだ。今回は演劇だけではなく、シルクドゥソレイユのパフォーマンスも加わり、舞台デザインには「アメリカンイディオット」でトニー賞を獲得した、クリスティーン・ジョーンズ、そして観客は途中でディナーも体験できるとあって、前々から興味があったのだが、ついにそれを体験する事ができたのでそのレポートを書きたいと思う。
このQueen Of The Nightは、女王から招待された晩餐会に参加するというような設定になっている。
入場するチケットは、3種類あり、チケットの値段により行動範囲やパフォーマーとの関われる頻度、案内されるテーブルのステージからの距離が変わる。
私たちは真ん中の値段のチケットで入ったが、入場する際に赤いリボンのついた鍵を渡され、これを首から下げるように言われた。どうやら、リボンの色で、お客さんを分けているようだった。この赤いリボンのついた鍵を持っていると、バーで好きにアルコールを注文でき、パフォーマンスが始まる前から、テーブルが準備されているので、座って会場の様子を見る事ができる。パフォーマンスが始まる前まで自由に会場内を色々見て周ってよいと言われたので、会場内をウロウロしてみたが、会場はさほど広くはなく、すぐに全体が見渡せるような感じだった。しかし、ところどころにユニークなオブジェが置いてあったり、内装もミステリアスで凝っている。
舞台デザインには「アメリカンイディオット」でトニー賞を獲得した、クリスティーン・ジョーンズ。赤く塗った木の枝を使った内装など、凝っている作り。
トラの置物が置いてあったり、
壁はよく見ると、玉虫の羽根や蝶々の羽根が敷き詰められていたりする。なんとも独特な雰囲気。
トイレへ続く通路には沢山の電球が下がっている不思議な空間があったりする。
開演前にもステージの上には、既にマスクをかぶった女王が立っていて、観客と交流したりしている。(一番高いチケットの観客は、ステージの近くまで行けるようで、女王やパフォーマーとより関われるというメリットがある様だった。)女王はとても美しく常に言葉を話さず、とてもミステリアスに、エレガントな動きで、崇高な雰囲気を漂わせている。
マスクをかぶってステージに立つミステリアスな女王。
女王に向かって座っている若い女性がおり、彼女はレース越しにほぼヌード姿で正座をしている。このパフォーマンスを見る前までは、その女王と若い女性の関係がすぐに分からなかったが、見ていくうちにこのパフォーマンスは女王から若い王女への戴冠式をテーマにしているという事がわかってくる。
不思議な恰好をしたパフォーマーたち(おそらくシルクドゥソレイユのスタッフ)が会場の周りのお客さんのテーブルの周りをウロウロ歩ったり、(たまに、テーブルの上に登ったり!)と雰囲気を盛り上げる。
パフォーマンスの途中で食事が出されたが、各テーブルによって出されている料理は少し違う様で、私たちのテーブルには鳥の丸焼きとサラダが出された。パフォーマーの一人がお客さんの一人に食事を切り分けるように促す。他のテーブルにはベジタリアン向けの料理が出されているところもあった様だ。「もっと他の料理を食べたかったら、他のテーブルの料理とトレードすることもできるわよ。」とスタッフに言われる。
そして、料理を食べ終わった頃に、清掃係の人が、パフォーマンスの一部としてやってくる。
スタッフが「お皿を持って、そして、食べ残しはこちらに投げ入れて!」という促しに、観客たちも実際には掃除を手伝っている形になるのだが、パフォーマンスの一部という感覚で楽しみながら、ゴミ箱にお皿や残飯を投げ入れる。
実際のレストランのサービスとしてはありえない事を、パフォーマンスの一部として観客をのせて、お料理を切り分けさせたり片づけさせたりするという、よく計算された筋書きである。
お客さんは、それをわかっているけれども、楽しんでやっている。ただお客さんとして座ってパフォーマンスを見るのではなく、自らそのパフォーマンスや空間に関わる楽しさを利用しているといった感じだ。
このQueen Of The Nightの面白さは、ステージ上の素晴らしいパフォーマー達がステージを降りて、観客とコミュニケーションを取ったりする機会がある事、食事が出されるので、映画のワンシーンの様なミステリアスな晩餐会に参加しているような体験ができる事、ステージのパフォーマンスや衣装もシルクドゥソレイユ仕込みで、ただのパフォーマンスの連続というわけではなく、シルクドゥソレイユらしくきちんとしたストーリーがあり、パフォーマンスにも静と動がはっきりとわかれており、衣装もセットもビジュアル的にとても美しい事などであると思った。とても多面的な面白さを体験でき、今までにない面白いミュージカルだと思った。(果たしてミュージカルというカテゴリーに入るのかさえ、謎である。)
元々シルクドゥソレイユの世界観は私は大好きなのであるが、自分もその空間に身を置く事が出来るというのは、とても嬉しかったし、貴重な体験だったと思う。
ただ舞台で起こっている事を眺めているよりも、実際に自分がその場で体験をする事で、より強い印象を受け、とても刺激的でまるで不思議な夢の中にいるような感覚だった。
因みに、余談だが実は私はレースのようなメタルのマスクを作っているのだが、いつかこういった素晴らしい舞台やパフォーマンスにマスクを作るような機会を得られたらいいなと思う。
Cell Mask
http://www.ayakanishi.com/collections/cell/products/cell-mask-silver
この面白さは、口で説明してもなかなか理解してもらえにくいと思うので、是非とも機会があれば、体験してもらいたい。New Yorkでのサプライズデートにもピッタリだと思う。
Queen Of The Night
queenofthenightnyc.com
ニューヨークを拠点に活動するジュエリーデザイナー。全ての作品はハチの巣、クモの巣、骨、化石など自然の素材や形をテーマにマンハッタンのイーストビレッジにあるアトリエでハンドメイドで作られている。作品は国内外の雑誌、Vogue, ELLE, NYLONなどに紹介されている。アトリエでは、プライベートでジュエリークラスも開講中。
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