旅に出よう。フランス人的ヴァカンスは叶わなくても

 南仏はいま、ヴァカンスシーズン真っただ中。「Route du Soleil(ルート・デュ・ソレイユ)」と呼ばれる高速道路A7を走れば、北フランスやベルギー、ドイツ、オランダ、イギリスなど国内外の車が荷物をいっぱい積んで、地中海を目指してびゅんびゅん南下していきます。
 ホテルに滞在する人もいれば、別荘や実家、友人宅に泊まる人もいる。家族連れで多いのは、ジットと呼ばれるキッチン付きの宿を利用する人。このタイプの宿泊施設は週貸しが基本で、土曜から土曜と決まっているので、土曜日の高速道路はとっても混むのです。自由をこよなく愛するフランス人には最適な、キャンピングカーの愛用者も多く、長期でのんびり快適な車旅をしているリタイア組も多い。

 ヴァカンスをどのくらい取るかは仕事にもよるのですが、南フランスの商店でさえ、3週間から4週間休むところが多くて驚きます。南仏の夏なんて繁盛期だというのに、暑いときは身体を休めて、心身ともにリフレッシュするのがフランスの伝統であり、しかも、「もういい加減に働きたいな」と思うほど、飽きるまで休むのが彼らの流儀なのです。
 南仏のヴァカンス客は、7、8月は子供連れが多く、新学期が始まる9月からはリタイア組の熟年夫婦が増えます。ホテルも飛行機も安くなり、海辺の渋滞も解消され、残暑といえども気温が下がって過ごしやすくなるので、9月は静かな大人のヴァカンスシーズン。

france-vacances-02

 日本ではそのような長期ヴァカンスをとる環境にないのが残念だけれど、たとえ短くとも、旅はするべし。できればツアーではなく、個人旅行。自分のペースで行きたいところに行き、食べたいものを食べ、気に入った場所があれば好きなだけそこに佇んでいられる自由さがあったほうがいいに決まっています。もちろん、言葉の壁があったり、気をつけなくてはいけないことはあるけれど、それも含めて旅の醍醐味なのだろうと思うのです。観光だけでなく、訪れる国の文化や習慣を知り、体感することで、その後の人生観が変わることだって、あります。
 20代前半でメキシコへ行ったとき、当時、「住み心地世界ランキング」47位だった彼の地の人々が、どう見ても日本人(当時10位)よりずっと幸せそうに見えたことに衝撃を受け、それ以来「生きる喜び」「幸福感」とはいったいなんなのだろう、という疑問がいまだに頭から離れずにいます。もしかしたら、いまこうして私が南仏にいるのも、そのとき頭にくっついた疑問符を自分なりに解明するための必然なのかもしれません。

france-vacances-03

 いまでも思い出して笑ってしまうのが、友人だった亡きクロードが1ヶ月日本を旅したときに驚いたコトのオンパレード。

「道路にゴミがまったく落ちてないし」
「道路に灰皿があるし」
「犬のフンもないし」
「駅のホームや切符売り場には、目の見えない人のために点字や道の凸凹があるし」
「人が多すぎて道に迷って泣きそうになったし」
「大人が携帯電話やバックにバカデカイぬいぐるみをつけてるし」
「箱根のゆで卵は臭すぎて吐きそうになったし」
「女性たちはおそろしく派手なネイルをしてたし」
「スーパーの出口に警備員がいなくても、みんなちゃんとお金払ってるし」
「スリもいないし」
「掘りごたつなんて知らないから、思いきり穴に落ちたし」
「雨降りの日は、店の前に傘にかぶせるビニールの袋が置いてあるし」
「しかも、それが自動のまであるし」
「サラリーマンたちは仕事が終わってもすぐ家に帰らず同僚と飲みに行くのが意味わからないし」

 フランスとの違いに、日本で目をシロクロさせている彼女が目に浮かんで、思い出すたびに吹き出してしまいます。私も旅に出ると、彼女同様、驚きの連続で、超ハイテンション。未知の地で、目を皿のようにして地元の人たちの一挙一動を眺めるのって、本当におもしろい!

 頭を休ませれば、不思議と力がみなぎってきます。体だけでなく、精神的に疲れていたり、どん底に立ち直れないくらい落ち込んでいるときこそ、思い切って旅に出て、日常から離れるべし。伸びきったゴムのようになっていた精神が、びっくりするくらいまともになる。私が長年勤めた会社を辞めようと決めたのも、ひとり旅の途中でした。日常のなかでは、発想を転換したり、視点を変えたりするのは本当に難しい。瑣末なことに追われて、いちばん大切な自分の本心が心の奥に追いやられて、見えなくなってしまうから。
 日本の会社では、有給休暇があるというのに、「休ませてください」と上司に頼まなくてはならず、上司は上司で「どうして?」だの「暇なの?」と言ったりする人もいると聞きます。その「上司」とやらが40代くらいだという話を聞いてびっくりしたことがありますが(私より若い!)、いくら自分がそうされてきたからといって、その悪しき伝統を引き継ぐことはないでしょう。若い部下にはどんどん休んでもらって、いきいき、のびのびと力を発揮してもらうほうがずっと建設的で賢明。率先して休みをたくさんとるような上司がいたら、若い人も休みやすく、労働環境がぜんよくなり効率アップにつながると思うのですが、いかがなものでしょうか。

france-vacances-04

Recette

今月のレシピ

プロヴァンス風
冷たいトマトのスープ

<材料>4人分
トマト(よく熟したもの)700g
メロン(安いものでOK)200g
バジル 10g
キュウリ 200g
ニンニク ひとかけ小
野菜のブイヨン 175ml
オリーブオイル 大さじ2
塩 適量

<作り方>
①適当な大きさにカットしたトマトをミキサーにかける
②カットしたキュウリを加え、さらにミキサーにかける
③カットしたメロンを加え、さらにミキサーにかける
④みじん切りにしたニンニク、バジルを加え、さらにミキサーにかける
⑤ブイヨン、オリーブオイルを加え、ミキサーにかける
⑥漉して、冷蔵庫に入れて最低2時間以上冷やす
⑦スープ皿に注ぎ、オリーブオイル(分量外)、塩少々で好みの味に仕上げる。飾りにバジルやミントの葉をあしらっても。
※写真のように小さなガラス器やエスプレッソカップに入れれば、一口サイズのおもてなし料理にもなります

マルシェで売られているプロヴァンスのトマトは種類豊富。形も大きさもばらばらだけど、完熟でおいしい!
マルシェで売られているプロヴァンスのトマトは種類豊富。形も大きさもばらばらだけど、完熟でおいしい!
町田陽子
町田陽子 Yoko MACHIDA
南フランス在住
エディター。執筆
2017年1月に著書『ゆでたまごを作れなくても幸せなフランス人』(講談社)を刊行。
7月にガイドエッセイ『プロヴァンス(仮)』(イカロス出版)を刊行予定。
「南仏プロヴァンスの旅アラカルト」主宰
シャンブルドット「Villa Montrose」(ヴィラ・モンローズ/フランス版民宿)を営み、元料理人のダヴィッドが日本語で観光チャーターや料理教室、ターブルドットを担当しています。毎年3月開催の阪急うめだ本店「フランスフェア」をコーディネイト。
HP : http://www.villamontrose.com/
Facebook page : https://www.facebook.com/provence.voyage/
Blog : http://ameblo.jp/provencal/
twitter : https://twitter.com/yoko_machida
Instagram : https://www.instagram.com/yocomachida/

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします